ヤッターマン






2010年3月8日 更新



あらすじ

♪ワンッと吠えりゃ(ワン!)ツースリー、サイレンの音、たーからかにー、地 球の裏表(オウッ!)ひーとっ飛びー、只今出動、ヤッターマン!




制作国 :日本
公開日 :2009年3月7日
配給 :松竹・日活
監督 :三池崇史
脚本 :十川誠志




出演者

桜井翔  福田沙紀  深田恭子  生瀬勝久  ケンドー・コバヤシ







 小学生のときにテレビで見たアニメのOPが今でも空で歌えるというのは、やはり自分の脳の奥深いところに音と絵の体験が根ざしているからだろう。
親が子供 のときに観ていたアニメを子であるおれが未だ忘れずに覚えているのは、「ヤッ ターマン」という作品がどれだけ影響力が強いかを物語っている。
テレビ局の人間や現職のスタッフにもこのアニメを愛着を持つ人は多いらしく、「子供アニメ 大会」と銘打った夏休みの朝のアニメ特集で「クレヨンしんちゃん」や「平成イ ヌ物語 バウ」などに混じって毎年放送されていた。
独特の絵柄、敵味方問わず愛着のわくキャラクター、数え切れない名ゼリフ、毎週変わる楽しいロボット、 ラストの原爆が破裂したような繰り返しの爆発シーン・・・そして期待してしまうお色気いやーんエッチである。
現在とは比べ物にならないほどアニメのエロ規制は厳しかったにも関わらず、おれが最初にアニメで乳首を見たのは何を隠そう ドロンジョ様だったのだ(ちなみにピンクだった)。
次の週から親のビデオデッ キでこっそり録画し、ドロンジョ様の入浴シーンや愛ちゃんのチアダンスのパ チラシーンに興奮したエロ小学生だったのだが、今考えるとそんなガキは日本各地にいた(と思う)。

 恥ずかしい告白はこの辺にして、その「ヤッターマン」が誰も予想しなかった実 写映画化である。
監督は「殺し屋1」や「スキヤキウエスタン」、次は「クロー ズZERO」の公開が控えている三池崇。
この監督、アタリハズレの振り幅が大きく、しかも「ヤッターマン」というどう撮っても馬鹿馬鹿しいものにしかなりそうもない題材。
下手なものを作ればカルト的人気のある「ヤッターマン」のオールドファンから苦情殺到であろう。しかし、蓋を開けてみれば、原作を忠実に 、かつちゃんと「映画」になっているではないか。
キャストもぴったりハマってるし、CGの使い方もハイレベル。原作のギャグのシュールさがオリジナルのネタでもしっかり出ている。
お約束のツボもこれでもか!というくらいギューっと 押さえに押さえ、原作ファンはニヤニヤが止まらない。家族で来たお父さん、お 母さん。あなたたちは気付いていますか。
子供に還ったようにわくわくしながらあなた達が観ている横で、本当の子供は元ネタが分からずポカンと口を開きっぱなしですよ。

  フカキョンの乳首は見れなかったものの(当たり前だ)随所に散りばめられているドロンジョ様のサービスカットや、「これ地上波で流せんの?」と心配してし まう下ネタの数々も原作の「ノリ」を引き継いでいるようで、観ていて楽しい。
「下品さ」こそ、「ヤッターマン」の笑いの根底にあるものであると三池監督はちゃんと分かって作っている。今作を観たPTA保護者各位には存分に騒いで欲 しいものである。

 興業はかなり上々のようで、ヒーローアニメという破天荒な原作でも、しっかり 作ればみんな劇場に足を運ぶという好例になることだろう。
実はこういったはちゃめちゃな映画は低予算ながら毎年作られてたりする。が、そのほとんどが上映 してたこと自体忘れられているのが現状だ。
「東京ゾンビ」や「キャプテン・ト キオ」など、予算だけ見れば「ヤッターマン」に比べ十分の一以下だろう。内容も勿論だがやはりこういうリアリティからかけ離れた作品をやるには、その「あり得なさ」を客に信用させねばならず、この「信用」はCG背景や造形物にどれ だけ力が入ってるかで決まり、「力の入り方」とはとどのつまり予算である。
映画には膨大なお金がかかるが、こういうジャンルは予算をケチると途端にうそ臭 さがスクリーンに蔓延する。築き上げてきた「非現実感」は消え去り、ハリボテと安っぽい特撮がそこに残る。
今回の成功は「ヤッターマン」という幅広い層に 支持された原作と、三池崇というこれまた映画ファンと一般観客に広く受け入れられた巨匠(と言ってもいいでしょう)がタッグを組んだことでプロデューサー が惜しみなく資金面をカバーしたために生まれたものだ。
もちろんCGスタッフ から衣装に至るまで本気で取り組んだことも大きい。これを期に第二、第三の「 ヤッターマン」が登場するのを期待してもいいだろう。

 それじゃあ原作を知らない子供は全く楽しめないのか、というとそうでもない。
ちゃんと低年齢層にも笑えるポイントは用意されていて、見終わってから「全然笑えなかった」というお子様はそういないはずだ。
ただ、笑える子供向けとして 観るにはちょっと歯切れの悪いものになっていたりする。原作にもある「今週の ビックリドッキリメカ」には劇場の子供たちもおもちゃを見るように目を輝かせていたが、その直前の鼓笛隊によるドラムロールには「?」という顔をしていた。
オリジナルの物語ならあのドラムロールはなかっただろうが、あれは大人のためのアニメの「お約束」なのだ。
「来るぞ、来るぞ」という興奮なのだ。あれがないと大人は消化不良だし、あれが入ることで子供は笑いのテンポが悪い。
なんとも親子泣かせのヒーロー映画である。













2009年3月20日 MOVIX亀有にて鑑賞


一覧に戻る