ノルウェイの森






2011年11月11日 更新



あらすじ


強く生きる事、深く愛する事。



制作国 :日本
公開日 :2010年12月11日
上映時間 :133分
配給 :東宝
原作 :村上春樹『ノルウェイの森』(講談社刊)
監督 ・脚本 :トラン・アン・ユン



出演

松山ケンイチ 菊池凛子 水原希子 高良健悟 玉山鉄二














■ ハイジン

 今日は映画「ノルウェイの森」なんですが、この映画は随分と前から映画化される事が発表されて、最初は村上春樹の小説「ノルウェイの森」が映画化される、という事が発表されて、それから、徐々にキャストが発表されて、少しずつ情報が解禁されていって、いわゆる公開前の頃が一番盛り上がっていた印象があるんですね。
 それは単純に、村上春樹の「ノルウェイの森」が映画化、という事が、この映画を語る上で一番の核となる部分だとは思うんですけど。
 僕自身も、村上春樹は好きな作家の一人で、長編、短編含めて、かなりの数の作品は読んでいるんですけど、「ノルウェイの森」はそんな中でも1位、2位を争うくらい好きな作品だったんで、映画化が発表された時点で非常に期待はしていましたし、楽しみにしてはいましたね。
 まずは、最初観た印象から聞きたいんですが、ニクロはどうでしたか?






■ ニクロ

 あの、今、ハイジンは「村上春樹の小説が映画化された事がこの映画の核になる」と言ってたんですけど、僕は正直、今日は村上春樹という名前を一言も出さずに喋ろうと思っていたんで、そう言われちゃうと、俺は正直、純粋に原作があるとか、原作がないとか、そうゆう事じゃなくて、やっぱり映画は映画としての在り方があるわけで。
 例えば「原作のこれが表現されてない」とか、「もっとこうしたら良かったんじゃないのか」とか、そうゆう事は野暮だと思ってるんで、俺はそうゆう見方はせずに純粋に、一本の映画として「ノルウェイの森」を観たんですけど。






■ ハイジン

ちょっと言いですかね。僕も、映画は映画として、というのはもちろん単純に思ってるんですが、ちょっと「ノルウェイの森」に関しては、原作を無視出来ない位置にあると思うんで。






■ ニクロ

それは、(原作の)ファンであるかないかの違いじゃないんですか?






■ ハイジン

やっぱり、これくらい(原作の)名前が大きいと。






■ ニクロ

でも、今、それを語る必要があるかというと、違うんじゃないかと思うんですけどね。






■ ハイジン

それ(原作)を込みでないと語れない映画だと俺は思うんですね。






■ ニクロ

 いや、それはハイジンの考え方であって、俺の考え方は映画のみで、という所なので。
原作どうこうの比較をするつもりは全くないんですね。






■ ハイジン

俺の作品に対しての見解はまた後でいいますので。






■ ニクロ

 やり方はお互い別でいいと思うんですけど。まあ、単純に俺の映画を観た印象っていうのが、正直、日本の並みの商業監督以下だな、っていう、感じだったんですね。トラン・アン・ユン監督が。
 もともと、この人の前に撮った「パパイヤの香り」っていう映画は観てたんですけど、その映画もちょっと冴えない映画で、何というか、イヤらしい監督だな、って思ってたんですよ。

 狙って撮るんですけど、それが全くリズムが悪くて、その悪い所が全部引き継がれて「ノルウェイの森」が撮られてて、「パパイヤの香り」よりも更に悪くなってるんですね、撮り方のセンスの悪さ、テンポの悪さみたいなものが。
 だから、どうしようも無い、フォローのしようがない駄作だな、っていう事で。それが僕の最初の印象ですね。






■ ハイジン

電脳BOYはどうでした?






■ 電脳BOY

 そうですね。僕も原作は読んでて、原作も好きなんですけど、映画はちょっと、リズム感が無かったなと。
バツバツ切られてましたし。台詞回しもくさいというか、イマイチその人物が喋ってるような気がしないというか。
もう一回観るか?って言われても、もう観ないという作品でしたね。






■ ニクロ

 何かが深まっていく撮り方じゃないんですよね。
その場その場のしのぎのようなインサートとしか思えない。






■ 電脳BOY

PVっぽい?






■ ニクロ

 PVでもいいんですけど、PVだったら何回も観たいんですけど、PVにしてはしょうもないんですよね、撮り方が。
ハイジンはどうでしたか?






■ ハイジン

 俺は、面白かったですね。面白い、けれども、これは80点の面白いですね。
いわゆる「文句なし。最高に面白かった。100点です」ではなく、80点の面白い、という所で、イヤな言い方をすれば何処からも叩かれない撮り方をしてるというか。
 いわゆる原作に思い入れがある人にも、前知識が何も無い人が観ても、双方から支持を受けるように撮っている、というのが俺の印象だったんですね。

 俺も、「ノルウェイの森」に付加している様々な情報は遮断して挑みたいんですけど、この映画に関してはある程度は遮断出来ないと思ってて。






■ 電脳BOY

思い入れが強いから?






■ ハイジン

いや、個人的な思い入れではなくって。






■ ニクロ

遮断しきれない映画なんて存在しないですからね、この世に。






■ ハイジン

いや、遮断出来ないんですよ。






■ ニクロ

それは、ハイジンの感覚なんですよ。






■ ハイジン

 エヴァの新劇場版を遮断出来ないのと一緒で、一本の映画としてまっさらで見ましょう、というのが出来ないんですね。
ウルトラマンの新作が映画で作られます、ってなってもまっさらな気持ちで観る事が出来ないのと一緒で、「ノルウェイの森」もそうゆう意味では、他の情報が多すぎる、という事で全てを込み込みで観るべきだと俺は思うんですよ。






■ ニクロ

べきって事は絶対ないですけどね。






■ ハイジン

俺はそう思うんですね。






■ ニクロ

はい。






■ ハイジン

そういった意味で、外野の情報が多すぎる、という宿命にある映画だと思うんですね。









ノルウェイの森の演出









■ ハイジン

撮り方に関して言えばね、ちょっと笑っちゃうような所もあるんですよね。






■ ニクロ

監督はマジで撮っちゃってるんだけど、完全にギャグになってる所はすげーありましたよ。






■ ハイジン

 監督が物語を記号でしか描こうとしていないんですね。それ故に、会話のみに重点を置いて、立ち止まってる男女二人が会話をしている、という構図、それだけを見せる、っていう場面が幾つかあって。
最後の方で、緑とワタナベくんが向かい合って、「私を選ぶ時は、私だけを選んでね」っていう台詞を言うシーンなんですけど、ココでは映画的な運動はなくて会話のみに重点を置いていて、だけど、映画の中では二人は対話をしている、という奇妙なシーンなんですね。立ち止まって喋ってるんだけど、その前後は一切匂わせず、会話だけを抜粋している。

で、結構、そうゆうシーンが多いんですね。






■ ニクロ

 まあ、元々が、原作の事を言う気はあんまりないんですけど、運動しながら会話をするような作品でもないじゃないですか。
緑のシーンでも二人がバレーボールをしてたらいいのか、っていう話になるじゃないですか。
でも、そうゆう事じゃないじゃないですか?






■ ハイジン

例えば歩きながら喋っていて、その言葉の中に引っかかって、そこから立ち止まって、というような運動がなくて、純粋にただ見つめ合ってる二人が居て、となるじゃないですか。






■ ニクロ

紙芝居的って事ですか?






■ ハイジン

そこだけ切り取ってるような。






■ ニクロ

喋ってる事ベースの。






■ ハイジン

そうです。そこは、まあ、そうゆう属性の映画として俺は観れたんですけど、笑ってしまったというか。






■ ニクロ

 ちょっと、僕も同じ所で笑ったんですけど、それはハイジンの言う所とは全然違って、緑とワタナベくんの顔の大きさが全然違うんですね。緑がスゲー顔小さいんですけど、マツケンはスゲー顔がデカいんですよ。
その二人が同じフレームに収まると、明らかにあり得ない余白が出来て、二人を入れてクローズアップであそこを撮ってるんですけど、もう明らかにバランスがおかしな事になってるんですよ。
何でこんな顔の違う二人を選んでしまってるんだ、というような、人選ミスがこの映画って多いんですね。

 人選ミスというか、キャストに関してはこの映画ほぼ全部ダメなんですけど。マツケンも含めて。
どう思いました?俺は全然、ダメなんですけど。






■ 電脳BOY

俺は、菊池凛子がいただけなかったですね。






■ ニクロ

俺、途中から〇〇にしか見えなかったんだけど(笑)






■ 電脳BOY

(笑)






■ ニクロ

ただ、一人だけ唯一いいと思った役者がいました。






■ ハイジン

俺も居ましたね。






■ ニクロ

解りました? あの、永沢さんの彼女。






■ ハイジン

それもいいですけど、あの、洗面所でワタナベくんが顔を洗っていると、手紙を持って来たエキストラ。






■ ニクロ

あっ。






■ ハイジン

 マツケンが顔を洗ってて、手紙を持って来るんだけどなかなか渡さなくて、憎たらしく笑う奴。
あのエキストラの表情、めちゃくちゃいいですよ(笑)






■ 電脳BOY

ちょっと、マニアックじゃないですか(笑)






■ ハイジン

ホントにたまらない表情なんですね。






■ ニクロ

確かに、この映画の中で、急にそれをやられるとドキッとするんですよね。






■ ハイジン

 間違いなくコイツは、主要キャストの顔じゃないんですよ、間違いなく。
でも、いい仕事してたんですよ。






■ ニクロ

 俺がいいと思ったのは永沢さんの彼女のハツミさんで。凄い顔をしてますよねあの人。
昔、シャーロット・ランプリングという女優さんが居て、もう真正面を見ても、黒目の下が見えるという、怖い顔をしてたんですけど。俺、人生で観たの二人目なんですね。黒目の下が見える人。あんなに怖い顔をしてる人が居るんだ、と思って。
この人だけは俺の中で凄いと思ったんですけど。それ以外はいただけないというか。嫌な監督の演出に付き合ってる気がして。
マツケンにしても、倒れる所で、口から涎出してるシーンありませんでした?あのシーンって、どう見ても舌で涎を押し出してるんですね、マツケンが。ハッキリ見えたんですけど。

 演出でやるにしても、やらせたんだな、っていう所が浮いて見えちゃうんですよ。この辺が監督の演出の力量の無さなのかなと、そう思いましたね。






■ ハイジン

 叫んでる所もそうだったんですけど、映画の運動、リズムを作るのではなくて、そういった事をやっているんだ、という格好がこの映画では大事なんですね。
ココではマツケンが泣き叫んでるんだ、という。本来の映画の撮り方とは違う、PVという話も出たんですけど、それに近いとは思いますね。






■ ニクロ

 運動してるカットもこの映画良くないと思っていて。それを言ってしまったらホントに良くない所だらけなんですけど。ファーストカットからして、この映画を象徴してるんですよ。最初に直子が先頭で歩いて来るんですよ。
それをカメラが追って、そこにワタナベとキズキがフレームインして、アイスの棒で戦っている、というカットありますよね。
で、そのあとで、直子とキズキがカメラのど真ん中でキスをすると、アイス越しに。基本的にこの映画ってカメラの中に役者が自分から入って行って収まる、っていう構図なんですね。
それはもう、フレームインして、観客の視線をそうゆう風に誘導して、カメラから役者が遠ざかって行くカットがほとんどないんですよ。

 やっぱり、そうゆう意味でも演出がクサいんですね。観客が今ココに来ている役者を観るぞ、という事をカメラが意識させて、監督が撮らせているんですよ。やっぱり、そうゆう所を意識しちゃうと、どこを見てもダサいんですね。
 結局、役者が中心で止まるんですよ。ココで喋るんだろうな、と思ったら喋るんですよ。もちろん、そうゆう映画があってもいいんですけど、そこに何かまた違う切り込み方をしないと、ただ凡庸な撮り方になっちゃって。
結局それが何なのか考えても、媚を売ってるとまでは思わないけど、そうゆう風に考えちゃうんですよね。






■ ハイジン

解りました。ありがとうございました。



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