時代屋の女房




2009年8月10日 更新



あらすじ

東京の大井で、三十五歳でまだ独り者の安さんと呼ばれている男が「時代屋」という骨董屋を営んでいる。
夏のある日、野良猫をかかえ、銀色の日傘をさした、真弓という、なかなかいい女がやって来ると、そのまま店に居ついてしまう。
一緒に暮すようになっても、安さんは、真弓がどういう過去を持っているか訊こうともしない・・・。

制作国 :日本
公開日:1983年3月19日
上映時間:87分
監督:森崎 東
脚本:荒井 晴彦
原作:村松 友視 「時代屋の女房」


出演者

夏目雅子 渡瀬恒彦 大坂志郎 初井言榮
津川雅彦 藤木悠  藤田弓子
 







 浅草に行ったのは半年ぶりだった。以前は映画目的ではなかったけど、観光局の多さや独特の日本らしさに度肝を抜かれたのを覚えている。
東京のどの場所とも違った雰囲気は、さながら外国に行ったような気分で、自分の経験してきた日本とのギャップに酔いしれた。
 そして今日、その二度目の体験をすることになった。場所は浅草新劇場。
ここでは三本立ての映画(日活・東宝・松竹が混ざって観れるのはここだけらしい)がナント驚きの800円で観ることができ、ワンコインとプラス300円で、休憩を挟んで朝から晩まで映画館に居続けることができるという、グミ・チョコレート・パインの賢三が泣いて喜びそうな映画館だ。
中に入ってまず驚いたのは、先に入っている何人かのおじいちゃん(これは予想していたが)が各々、自分の家のようにくつろいでいて、映画が始まってもその姿勢を崩すことがなかったことだ。
知ってる地名が出ると早速隣の友達に「俺ぁ、あそこいったことあるよ。い〜いところでなぁ」と会話が始まり、劇中のラジオから知ってる曲が流れると歌い出すやつが2,3人いる。
極めつけは椅子を限界まで利用していびきをかいて寝ているジジイ(ちなみにエンドロールまで起きなかった)。
 と、「ロッキーホラーショー」ばりのフリーダムな観客が、もはや一本の映画というより喫茶でムード音楽を何となく聴く感覚でスクリーンの前にいたのだから、映画の値段以上に驚いた。
 映画もそれに呼応しているようなものを選んでいる気さえする。
とまあ、そんな不思議で刺激的な環境で観たのが1982年の映画「時代屋の女房」。
ぎりぎりまで仕事だったのでこれ一本しか見れず、全く予備知識のない状態で鑑賞。
どうやら原作は同年直木賞を取った小説らしい。
が、文芸臭さはまるでなく、どちらかといえば娯楽要素の強い作品で、タイトルから時代屋=堅物の気取った昔かたぎの男、の女房が泣かされながらも寄り添う話、とかを想像していたが、「時代屋」とは主人公の経営しているアンティークショップの名前で、「時代屋の女房」とはそこに急に押しかけてきて主人公と同棲する女の子のこと。演じるは夏目雅子。
 そして彼女が全ての映画であるといってもいい。
一昔前のアイドルながら、現在のアイドルより、全然きれいで可愛いなあとおれは見惚れてしまった。
それほどに彼女に魅力があり、はっきり言って、それほどストーリーに魅力もないのでヒロインありきで観てしまう映画だ。
グミチョコ風に言えば「少女を主人公とした映画」と言い方がピッタリくる。
あらすじは彼女が「時代屋」にネコを預かって欲しい、とお願いに来る。
野良猫でそこの道で拾ったらしい。
彼女と話しているうちに私も預かって欲しいわと言って一夜を共にする二人。
半年後、籍は入れてないものの、夫婦同然に暮らしている二人だったが、彼女が留守電を残して出て行ってしまう。
 話をはしょるがその後何度も出て行ったり戻ったりを繰り返す内に彼女が帰ってこなくなり、東北まで探しに行くが見つからず、東京に戻って再会するという話なのだが、恐らくは原作をなぞらえすぎているのかちょっとシュールというか意味不明な場面が多い。
前衛的という解釈には中途半端でおれにはあまりぐっとくるところのない映画だった。
だけど、ああ、夏目雅子、めっちゃ可愛いなぁ〜〜〜・・・で十分合格点だ。
それだけで映画館に居る幸せを噛み締められ、他のお客も同様、だらしなく見惚れながら満足げな表情だったのだから。














2008年12月30日 浅草新劇場にて鑑賞


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