ホットファズ
- 俺たちスーパーポリスメン! -




2009年9月28日 更新



あらすじ

首都警察の特殊部隊に勤めるニコラス・エンジェルは、大学を首席で卒業し、警察学校でもトップの成績を残し、幾度もの表彰を受けた頭脳明晰、スポーツ万能のエリート警察官。ところがある日、彼は田舎町サンドフォードに左遷されてしまう。彼はその有能さゆえ、上司や同僚にとって迷惑な存在だったのだ。サンドフォードでニコラスを待っていたのは、呑気でいい加減な仲間たちと退屈な仕事に従事するばかりの日々。首都警察の頃と同じ調子で働く彼は周囲と馴染めず、ここでも浮いた存在となっていく。しかし、この一見平穏な村には、ある恐ろしい秘密があった。

制作国 :イギリス
公開日 :2007年2月14日(日本公開日:2007年7月5日)
上映時間 :121分
配給 :ユニバーサルピクチャーズ
監督 :エガドー・ライト
脚本 :エガドー・ライト サイモン・ペグ



出演者

サイモン・ペグ  ニック・フロスト  ジム・ブロードベント






 高田馬場の早稲田松竹では芸術映画の二本立てと娯楽映画の二本立てを交互にやっている。
今はコメディ映画特集で次はミュージカル、その後は清順と三谷幸喜の特集を予定していて、そのチョイスがまた映画ファンのツボをうまくついている。
出来れば全部観に行きたい。とりあえず、この日はコメディ映画を二本鑑賞。
友達が「面白いよ!おすすめ」と言っていた「俺たちフィギュアスケーター」とのセットだったので観に行ったのだが、
上野でスタームービーでの二本立ての時と同様、おまけ感覚で観たこちらの映画の方が面白かった。
超絶警官アクションコメディ「ホットファズ〜俺たちスーパーポリスメン〜」である。しかし、今回は「俺たちフィギュアスケーター」もなかなか面白かったので、
両方じっくりと満喫でき、いい休日の時間を過ごせたと思う。
あらすじは超エリート警官のニコラスが、持ち前の優秀さで新人としては異例の検挙率を叩き出していたが、
そのあまりの有能さに上司は自分達が周りから無能に見られるの恐れ、彼を別の警察署へ左遷される。ニコラスが着いた新しい職場は、とんでもないド田舎の警察署だった。
そこにいる警官や村の人たちは村で起こる犯罪に対してはほとんどお咎めをしないという平和ボケした村だった。
それでも熱心に犯罪防止に取り組むニコラスは、ある日、交通事故を調べていく内に、これは殺人事件だと気付く。
そして段々と、この村そのものが異質であると疑い始める・・・

イギリス発の警官物コメディで本国でも相当ヒットしたらしいが、おれは警官物コメディがあまり好きじゃない。
たいがいが違うタイプの警官同士がペアになって、いがみあいながらも捜査を進めるうちにお互いのことを理解し始め、追っていた犯人を捕まえて大円団、
というプロットにもう飽き飽きしていた。この監督はそのことを良く分かっていて、「バットボーイズ」や「ポリスストーリー」などのその典型の作品を
映画の中に堂々と登場させておいて、実際はそれを笑い飛ばすような破天荒なストーリーが展開していく。
まず、有能な刑事が田舎村に異動になるというのが面白い。これは警察版「県庁の星」ともいえる作品になっていて、
エリートが田舎仕様のゆるさに四苦八苦する様はニヤリとしてしまう。特におれは田舎のプロ(実家がド田舎なのです、ハイ)だから、
田舎の駐在所のお巡りさんが暇そうにしているのや、子供が犯罪を犯しても、知り合いだったらほとんど和解で解決するのを知っている。
また何かの事件が地方紙で報じられた時には、すでに噂話で村人みんなが知っているのも映画のとおりだ(その田舎独特の生活にはウラがあるのだが)。
まさかイギリスの片田舎と我が故郷の町が映画で繋がれる日がくるとは思わなかった。一応大作なのに芸が細かい。
前半はそんなNYと田舎での勤務のズレをコミカルに描いていて、それはそれでのほほんと観れて面白いのだが、この映画は後半からが本番。
呑気に観ていた前半に実はとんでもない数の伏線が張られていて(その数約20以上)、ラスト30分あまりでそれらが全て回収されていくのは思わずあっけにとられる。
コレを予想できる人は多分いないんじゃあないだろうか(おれは村人全員が犯人かと思っていた)。
サスペンス要素がかなりしっかりしているので笑いながらもなかなか緊張感をもって観れる珍しい作品。
グロいシーンもB級ホラーチックでファンの胸をくすぐられる心憎い出来。あとは要所に散りばめられたダークな小ネタにハマるかどうか。
おれはイギリス映画のブラックユーモアは大好きなので(ヒッチコックの影響か)終始ニヤニヤしっぱなしだった。
 と、いいことづくめで終わりたかったんだけど、ちょっと難点を掘り返すなら、田舎にあれだけの数の監視カメラは(それが大事な伏線だとしても)
不自然すぎる。
あるいはイギリスの田舎では監視カメラはよく見るものなのだろうか。それと伏線回収の畳みかけが長すぎて、次にどの伏線が回収されるかなんとなく予想できてしまう。
「あ、あれまだ回収されてへんな。あ、ほらきた」と考えちゃうと少し冷める。もっとあっさりしてても良かったんじゃないかな。
文章では伝わりにくいかもしれないけど、これ、相当のお馬鹿映画なんですよ。だからあんまりリアリティを求めるのは酷かもしれんけど、
主人公の葛藤(エリート過ぎて周りが見えなくなる)
も巧く拾えてたら大傑作になってたかも知れんね。もちろんドタバタとしては秀逸ですよ。
最後に、恋愛を絡めなかったのは◎。冒頭で仕事が元で別れた彼女が出てくるんやけど、「ああ、話にこの女が度々絡んで、オチで仲直りしてエンドやったら気持ち悪いな」と思ってたら、それきり全く出てこなくてスッキリと観れた。
アメリカ映画も日本映画もそうだけど、どんな作品であれ、とりあえず恋愛は入れよう、っていう発想は止めて欲しい。
元々企画の時点でそういう設定がないなら、無理に捻じ込まなくてもいいじゃないですか。
「とりあえず」の恋愛要素は作品を殺すよ。いや、ホントに。














2009年01月11日 早稲田松竹にて鑑賞


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