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ヘアスプレー




2009年11月2日 更新



あらすじ

ヘアスプレー企業が贈る、ボルチモアで最高にホットなTV番組「コーニー・コリンズ・ショー」出演を夢見る16歳のトレーシー。ダンスだってオシャレだって申し分ない彼女には、ひとつだけ問題が…。
それは、彼女のBIGすぎるサイズ! でもそんなことは一向に気にせず、明るく前向きに生きるトレーシーは、TVショーのオーディションに参加。
なんとレギュラーの座を射止め、番組の人気者となるが、美人でスリムなライバル母娘の罠にハマり…?!


制作国 :アメリカ
上映時間 :117分
日本公開日 :2007年10月20日
配給 :ギャガ・コミニケーションズ


出演者

ニッキー・ブロントスキー ジョン・トラボルタ ミシェル・ファイファー
クリストファー・ウォーケン ブリタニー・スノウ アマンダ・バインズ






 ミュージカル特集2本目。それにしても「早稲田松竹」はかくも性格の違う2作品を取り上げたものだ。
アクロス・ザ・ユニバースを芸術、「ヘアスプレー」を娯楽として分けるのは少々暴力的だが面白い取り合わせだと思うし、観終わった印象もまるで違う。
同じ映画ジャンルを観たとは思えない。もしかしたらミュージカル映画というのはまだまだ発展途上なのかもしれない。
先に言っておくと、おれは「ヘアスプレー」が面白かった。
またしてもメインの映画に裏切られた結果となったが、今回は僅差である。
もっと言えばアクロス・ザ・ユニバースに脚本の底力が足りなかった。
その底力をこの超娯楽ミュージカル大作「ヘアスプレー」は持っていたのだ。
アメリカ、ボルチモアの小さな町に暮らすちょっとおデブな女子高生トレーシー。
彼女は大好きなテレビ番組「コーニー・コリンズ・ショー」で一緒に歌って踊るメンバーを募集してると知り、オーディションに出るが、その体型を見て門前払いされる。
落ち込むトレーシーだったが、友達のダンスパーティに来ていた司会者のコーニー・コリンズにダンスの腕を見込まれ、夢にまで見た新メンバーに抜擢される。
それを面白く思わないメンバーのアンバーと、彼女の母親であり局部長であるベルマに番組を追放されてしまう・・・
アメリカの肥満糾弾社会と自由に躍らせてもらえない黒人の差別問題を背景に夢見る女子高生トレーシーが歌って踊って奮闘するミュージカル大作。
全ジャンルを通して最後までテンションの落ちない映画を久々に観た。それがミュージカルであったからなおのこと驚いた。
ミュージカル映画においてどうしても点を落としてしまうのは歌や踊りの後、ドラマパートを経てまた歌と踊りに帰っていくときのあの切れ目の悪さである。
曲のリズムが良くても映画全体のリズムが乗ってこなければ、ミュージカル映画としては失敗だろう。
「ヘアスプレー」はトレイシーがノリノリで歌って踊りながら高校まで向かうOPから、エンドロールさえ楽しませてくれるスタッフの憎い演出まで“お腹いっぱい”にさせてくれるフルコースである。口からでなく耳から飛び込んでくる役者達のあの圧倒的声量!
映画館のドでかいスピーカーで腹の底が震えるような大合唱を聴けるのは映画冥利に尽きる。
「天使にラブソングを」に匹敵するのはこの映画くらいじゃないだろうか?コレに比べたら「アクロス・ザ・ユニバース」などノミのような声である(その繊細さがいいのだが)。
そして、美味しくない料理など一品もでないまま映画は終わる。
誰も文句を言わないまま大満足で家路に着くことだろう。ただ、そのまんべんのなさがコメディとしては弱い。
実際おれが一度も声を出して笑わなかったのは、向こうが用意した笑いどころが子供からおじいちゃんまでヒットする幅広いものだったからだ。
ミュージカルのメインディッシュで腹はふくれたものの、笑いのスパイスが個人的に欲しいところだ。
唯一、笑ってしまいそうになったのはトレーシーの母親役のジョン・トラボルタ(この時点で反則である)がラストシーンで踊った後にさりげなく指を立てたときだ。
トラボルタが主演した「サタデーナイトフィーバー」のパロディで映画ファンが思わずニヤリとしてしまう1カットだった。
あれは間違いなく確信犯だった。使い古されすぎている「弱者」が「権力者」を叩く、というプロットをこの映画も惜しげもなく使っている。
黒人軍団がトレーシーと共に番組を乗っ取った瞬間、観客は誰しもが気分爽快なことだろう。
そして、その攻撃は偏見まみれの番組担当者、ベルマが一手に引き受ける。
肥満であるトレーシーをのっけから非難したことと、黒人を堂々と差別してきたその罰がラストで全て彼女に降り注ぐのだが、おれは思う。ベルマってそんな悪かったか?と。
そりゃ多少は悪いこともしてきたよ。でも彼女は番組担当としてはとても優秀だし、新メンバーに対してもたまたまトレーシーが当たっただけで、普通に考えたらでぶっちょな子はアウトだろう。
彼女は正常な判断を下しておきながら悪者扱いされる悲しき身代わり羊なのだ。
映画のためとはいえ、おれは同情するよ。この映画の最大の弱点は黒人差別を背景にしながら、具体的に描かなかったことだ。
その点はアクロス・ザ・ユニバースにも似ているが、向こうはベトナム戦争、こちらは黒人差別で問題のスケールが軽かった分、そこまで印象には残らなかった(勿論これは黒人差別が軽い問題だと言ってるのではなく、双方の映画の中での問題の扱われ方のことだ)。
数年前まで(あるいは現在も一部で)生活にその差別が同居していた人たちが観るのと、テレビの向こうでしかその問題を知らない日本人が観るのとでは最初から圧倒的に知識量と経験量に差があって、どうしてもピンとこない部分はある。
そこを上手くカバーしてくれてたらもっと作品にのめり込めたかもしれない。
細かいことなのだが、トレーシー側がテレビ局に進入するという描写がなかったのは気になった。
物語の進行上、なくても無理はないのだが、上手くやればそこも笑えるポイントに出来たと思う。
一般人が厳重なテレビ局にどうやって入っていくのか。三谷幸喜なんかはそんなところまで余すことなく笑いにするから面白いのに。
ちょっともったいない。














2009年1月18日 早稲田松竹にて鑑賞


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