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大坂ハムレット




2010年1月4日 更新



あらすじ

朗らかな母親の房子(松坂慶子)と3人の息子、死んだ父親の弟を名乗る叔父が共 に暮らす久保家。
年上の彼女に「わたしのお父ちゃんになって」と言われて戸惑 う長男、次男はシェイクスピアの「ハムレット」のような家庭環境に悩み、女の 子になりたい小学生の三男……。
それぞれに深刻な悩みを抱えた三兄弟は、不器 用ながらも前向きに生きていく。

制作国 :日本
公開日 :2009年1月17日
上映時間 :107分
配給 :アートポート
原作 :森下裕美 「大坂ハムレット」(双葉社刊)
監督 :光石富士朗
脚本 :伊藤秀裕

出演者

松坂慶子 岸部一徳 久野雅弘 森田直幸
 大塚智哉






 可愛らしい、お人形さんみたいな映画。作品自体もそうだが、重苦しい映画の中の現実も忘れてしまうほどの役者たちの愛らしさ。
登場人物全員が可愛い映画も珍しく、大評判の理由ここに見つけたり、と確信する。
はっきり言って映画なんてものは自分の大好きなアイドルがハマリ役を演じているだけで、もう成功なのだ。
前に書いた時代屋の女房の夏目雅子がまさしくそれに当てはまり、彼女を中心に映画が回り始める。
今作ではそれが全員である。不良の次男が図書室で「ハムレット」を借り、貸し出し委員に「お前の持っとる本とおれの本、どっちが賢い?」と得意げに聞くところなど頬が緩んでついニヤニヤしてしまう。
こういうのが本当の「萌え」なのではないだろうか。

 大阪を舞台にしているのも役者陣にハマりこませるのに一役買っている。
この映画に汚らしい大阪は出てこない。
やくざが街を闊歩したり、ミナミの帝王みたいなやつがラスボスだったり、悪ガキがものを盗んだりしない。
実にクリーンな大阪であり、現地民が観たらこんなの違うというかもしれない。
が、そこは我慢のご愛嬌。何しろ原作はコミックであり、人間賛歌をテーマにしているので焦点は街そのものよりむしろ人間のほう。
不良たちが笑ってしまうくらいの昭和ステレオタイプなのも目をつぶりましょう。
彼らは次男を奮い立たせるための「障壁」なのだから。

 ただ、おれは原作がコミックではないかと観ている途中で察した。
案の定エンドロールでそれが分かり、一安心。
何故安心したかというと、これが全くのオリジナルで作られていたら監督スタッフともどもどんな頭してんねん!と気持ち悪くなるところだったからだ。
全体を包容する愛を、スタッフ会議で延々おっさんたちが生み出しているところをおれは想像したくない。
原作つきといえば西の魔女が死んだもそうだったが、あれは原作ファンが最大限に楽しめ、未読の人間は安っぽさを感じずにはいられなかったのだが、「大阪ハムレット」は未読でも十分楽しめ、原作を知ってたらもっと面白いんだろうなあと素直に羨ましがれる。
おそらく原作ほどに人物を掘り下げすぎない部分にも好感を持てた。
難を言うと、ふわふわした浮遊感が楽しいので、作品自体に重みを感じられないことだろう。
次男を襲う不良たちの幕引きもそこで終わりかい!と納得しづらいし、父親しか愛せない重い過去を持った長男の彼女も説得力がなく、演技もへたっぴで残念。
ただ、この空気感は今までの邦画になかったものであり、新しささえ感じる。
これが世間に受け入れられたということは、70年代アメリカンニューシネマ同様、世相を反映しているのかもしれない。
ゆるい日常の中に真剣さを求める時代。そこには人生に目を背けながらも人間の力を信じたい現代人の気持ちがあったのだろう。
この映画の新鮮さをもう一つ。面白いシーンが撮れそうなところで、あえて一歩引く演出が多々見られた。
それが中途半端に終わらず、独特の空間を作っている。こういうのが今後、案外流行るのかもしれない。














2009年2月2日 シネ・リーブル池袋にて鑑賞


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