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青い春






2010年4月28日 更新



あらすじ

「どーすんのこれから?」
息苦しい時代。そこで息継ぎの仕方を探っている若者達。
退屈な日々をやり過ごす無感情な日常のなか、ざわざわしたものを抱えて神経のエッヂをたてている、そんな高校3年生の春を、ノスタルジーではなく、新世代の群像として鮮烈に描き出す。



制作国 :日本
公開日 :2002年6月29日公開
上映時間 :83分
配給 :ゼアリズエンタープライズ
監督・脚本 :豊田利晃


出演

松田龍平 新井浩文 高岡蒼佑 大柴祐介 山崎祐太 忍成修吾












■ ハイジン

 それでは始めていきます。今回は、映画「青い春」なんですが、この映画は2002年に公開された松田龍平主演の豊田利晃監督の作品で、豊田監督は「ナインソウルズ」「空中庭園」といった作品の監督で、俺は一通りは豊田監督の作品は観ているんですけど、「青い春」は豊田監督の作品の中では一番面白い作品だと個人的には思っていて、正直、邦画の中でも5本の指に入るくらい好きな作品なんですよ。
で、コレって単純に豊田監督の人間性と作品が奇跡的にマッチしていて、画面を通して、あの重々しさや、閉塞感が映画にハマっているんですね。
この作品は2002年公開なんですけど、いわゆる近年のヤンキー主体の映画とは一線を画している作品で、例えば、小栗旬主演の「クローズZERO」やドラマで話題になった「ROOKES」とか、後は「ごくせん」「ワルボロ」品川裕監督の「ドロップ」とかそれらとは全く違う種類で、イケメン俳優を多様しているという意味では、類似点はあるんですけど、ただ圧倒的に画面から漂う空気が違うわけなんですよ。
で、それは単純に松本大洋原作のマンガが主体に来ているからという事になるんですけど、男だけを描く、という意味ではそれらとは異色にあたるんですね。






■ ニクロ

ホントに、女の人が観たらどう思うのか、っていうくらい男しか出ていないですからね。






■ ハイジン

 ひたすらに男臭い映画で、それですごい閉塞感があるじゃないですか。行き詰るくらいの。
で、その行き詰るフレームの中で、松田龍平の演技が奇跡的にハマっていて。
ハマり役とはこうゆう事を言うんだ、というくらいの演技で。






■ ニクロ

そうですね、役者がいいんですよね。新井浩文もすごくいいし。ユキオ役のメガネの彼も。






■ ハイジン

高岡宗佑。






■ ニクロ

エエ。すごく良くって。






■ ハイジン

彼なんかはルーキーズにも出てるんですけどね。あの後に。






■ ニクロ

 なんていうんですかね、その、ぶっきら棒な演技をさせてるんだけど、それがちゃんと画になっているというか。
決して手を抜いた、要は顔の筋肉を動かしまくって、体を動かしまくって演技をするんじゃなくって、ホントに静かなんですよね、全員が。
その辺を役者も含めて、監督が演出しているのはすごいと思いますね。






■ 電脳BOY

 俺は、元来の松本大洋ファンなんで、本当に真正面を切ってこの映画を観れない、っていうのはあるんですよ。
原作を先に読んでしまっている、という事で。






■ ニクロ

俺もまあ、原作が先なんですけど、映画自体がかなり原作を追っている所があるんで、それは本当にどうしようもないというか。






■ 電脳BOY

 俺の中では、マンガの中に出て来る台詞を結構使ってるんで、ほぼ一緒の事を言ってるんで、笑えちゃうくらいなんですよ。
で、オリジナルな所もあるじゃないですか。先生(マメ山田)が出て来たり。オリジナルな所はすごく面白いんですけど、マンガに出てきた所は俺の中では全然面白くないんですよね。






■ ハイジン

ピースとかですか?(笑)






■ ニクロ

ほとんどですね、じゃあ(笑)。






■ 電脳BOY

 だから、オリジナルな所は好きなんですよ。だから、全部オリジナルにしてくれよ、っていうくらいの(笑)。
一個「幸せなら手をたたこう」っていうのが、メインにあるじゃないですか。あそこをベースにして、後は全部オリジナルにしても良かった、と個人的には思っているんですよ。
他のピースとかを詰め込まなくても、良かっただろうなという。






■ ニクロ

 原作のキャラクターと、映画のキャラクターは似てるようでちょっと違うんですよね。九条にしてもそうなんですけど、九条はいわゆるマンガの方では本当に番をやってるようなキャラクターとして描かれていて、台詞は全く同じなんだけど、映画の方はより肉を削いだような。
だけど台詞は全く同じもんだから、松田龍平がやるとちょっと違和感があるシーンが多いんですね。






■ 電脳BOY

ちょっと無理がある?






■ ニクロ

 いや無理というか、馴染んでる所は馴染んでるんですけど、あのう、最初の松田龍平の冷めてる感じの演技をずっと観てて、途中で、原作と全く同じ台詞で「君だって俺を退してデカイ面したいだろ」みたいなのがあるんですけど、本当に違和感バリバリなんですね、あそこは。
何で急にそんな事を九条が言うのか、映画しか知らない人はよくわからないんですよ。
 まあ、マンガとしては一本通ってるんですね。そもそも、そうゆうキャラですからマンガの九条は。ただ、映画の九条はもっと線が細くて、ナイーブなようにしてるんだけど、漫画の台詞をそのまま追ってるから急にそんな事を言い出したり「二年坊の始末くらい」とか言うと、すごいうわついちゃんですね。急に、っていう感じがあって。
その辺はマッチングしてないんですけど、大方は上手くハマってるんで、まあ、実写化という意味では成功だと思うんですけどね。






■ 電脳BOY

まあ、2000年代的な見方をしたら。あーゆうキャラクターになるんだろうな、という。






■ ハイジン

でも、あの映画の独特な雰囲気って、90年代前半の雰囲気ですよね。






■ ニクロ

リリイ・シュシュですよ、あの空気は(笑)。






■ ハイジン

あの空気ってのがリリイ・シュシュって事ですか?






■ ニクロ

本当に青い春に関しても、アラベスクが流れても成立するような画面なんですよ。
画面の間と沈黙というものが。






■ ハイジン

 俺は、根底はマンガの雰囲気だと思ったんですけど。マンガの描かれた当時の煮えきれない、イマイチ熱くなれない、というような所を学校の中に閉じ込めたのが、青い春の原作だと思ったんですけど。
だから、その流れを映画が奇襲してるのかなと。だから、2002年という時代とはまたちょっと違ったりするのかな、と。






■ 電脳BOY

でも、古いんだったらもっとギラギラしてるんじゃないんですか? 喧嘩とか。






■ ニクロ

 まあ、豊田監督自身は古い人という感じはするんですよね、割と。
奇才みたいな扱い方されてるけど。空中庭園にしても、あの辺も描き方がそうあるだけで、ベタというか本当に90年代的な家族の崩壊の描かれ方をするじゃないですか。
だから、あの辺に影響を受けてて、知らず知らずの内に監督も作ってくと、そうなっちゃうのかなという気はするんですけどね。






■ ハイジン

 あざとい映画ではあるんですよ。青木が便所で水をかけられた後で、今から殴りに行くぞ、という時にバットだけを写してそのバットが一本づつ抜かれて行く所とかさ(笑)。
あの辺のあざとさが恥ずかしくもなる。そうゆう事をさ、サラっとやるんじゃなくって、ちょっとだけ観ていて「おいおい・・」と止まっちゃうんですけど、でも、そうゆうのをひっくるめて俺は、上手くハマってる映画と思うんですね。
バットでドンって寸止めをして画面をカットしていく所も。






■ ニクロ

 だから、痛いカットがないんですよね、青い春には。そうゆう意味では熱い他のヤンキー映画に比べて熱を持っていない感じっていうのが。
ユキオが友達を便所の個室で刺し殺すっていう所も、包丁だけが便所のドアに突き刺さってて。
あれも原作と同じなんですけどね。






■ 電脳BOY

アレもちょっと、あざといというかなんか(笑)。






■ ニクロ

 まあ、あざといんですけど、そのあざとさを上手く消してるっていうのが、ミッシェルガンエレファントの曲だな、って気はホントにするんですよ。
だから、割りと負っているんですよ。松本大洋の原作と、ミッシェルガンエレファントの曲ってのを。
この二つが無かったら本当に意外と大した事もないように見える作品になっちゃった、って気はするんですね。






■ ハイジン

そこが奇跡的にハマっちゃったという。






■ ニクロ

 そこがツイてたというか。それともう一個あざといポイントは最初と最後で、飛行機出るじゃないですか。
そこで、青木が「夢はパイロットでした」って言うんですね。もう、やっちゃった、って思って(笑)。
まあすごいなと思うのは、あーゆう男だけの学生しか出て来なくて、本当に大人の意見が交わらないという作品を作っておきながらちゃんと映画になってるというか。
自主制作映画ではなくって、一本の映画として出来てるっていうのは結構すごいと思うんですよね。
 結局、あーゆうのって、監督のオナニーじゃないですけど、そうゆう風に行きがちじゃないですか。
もう、男だけで撮るんだ、学生だけの目線で撮るんだ、大人の意見は入れないぜ、という事でトゲトゲしちゃうんだけど、最初から最後まで完璧に映画ですからね。変な素人っぽい臭さが全くないという。
カメラワークにしろなんにしろ完璧にベテラン達が撮って、あーゆう臭い作品を撮ってるんだな、という。









作品の描く閉塞感









■ ハイジン

 ちょっとさっき話した作品の閉塞感について聞きたいんですけど、俺はイマイチ松本大洋を読み込んでいないというのがあって、「青い春」くらいは持ってるんですけど、どうなんですかね、松本大洋的な閉塞感というのは、それは90年代的な感じなんですかね。






■ 電脳BOY

なんだろうねアレは。年代なのか。






■ ニクロ

まあ、90年代の人が飛びつきそうな感じはあるんですよね。90年代的というよりは。






■ ハイジン

リバーズ・エッヂ的な?






■ ニクロ

なんですかね、もう「あしたのジョー」は書かなくてもいいんだ、というような変な熱を削いだ所のドラマに共感を呼ぶような書き方をしていたと思うんですけど。






■ ハイジン

それは「タッチ」(あだち充)みたいな事ですか?






■ ニクロ

ただ、「タッチ」のストーリーは「あしたのジョー」なんですね。






■ ハイジン

 まあ、「あしたのジョー」あっての「タッチ」なんですけど、でも、根底の部分は「戦わない」ということなんで。
「タッチ」的な視線が80年代じゃないですか。で、リリイ・シュシュは90年代的なモノとも違うじゃないですか。
一個、自分自身を俯瞰しているもう一人の自分が居るような。
で、俺は青い春は90年代初期のマンガの閉塞感をそのままフィルムに焼き付けたと思ったんですね。






■ ニクロ

 まあ、でも観てて欝になるもんじゃないんですよね。変な話。観てて落ち込む映画でもないんですけど。
嫌な気持ちも残らないんだけど、何ていうんですか、寂しさみたいなモノが残るじゃないですか、観終わった後に。
それは、要所要所にあるんですけど。だから、そうゆう閉塞感を描きながら落ち込ませるようにしないっていうのは、結構、すごいと思ったんですけどね。
だいたいそうゆう方にいっちゃうじゃないですか作品って。どう描いても。






■ ハイジン

熱くなれない九条と、勝手に熱くなってる青木のすれ違いで、勝手に熱吹いて自爆する話じゃないですか。言ってみたら。






■ ニクロ

そこに、一応、二人はケツが青い頃からの友達だった、という証拠というか、確信犯的な記号は置いてるんですね。






■ 電脳BOY

ライバル的なね。






■ ハイジン

AKIRAと同じような構造も見えるんですけどね。






■ ニクロ

あー、なるほど。それは確かに言えますね。






■ ハイジン

 確か、松本大洋も大友克洋からは影響を受けてたし。
ただ、これは松本大洋の作品全般に言えるんですかね。鉄雄と金田みたいな関係というのは。






■ ニクロ

まあ、「ピンポン」でも確かにそうですからね。






■ ハイジン

あの辺の、空気差がある兄弟的なモノっていうのは。






■ 電脳BOY

全般に見られる表現ではありますね。






■ ニクロ

 この作品に出てくる高校生の格好の付け方って、かなり臭いんですよね。古臭いというか。
いわゆる閉塞感という所を狙ってる割には、物凄い典型的な野球部の人が負けて、ヤクザの人が迎えに来る、という。
あの辺の、野球部の先輩に対する尊敬っていうのも、すごいもっと昔な気がするんですよ。
キャラクターの作り方みたいな所は。






■ ハイジン

 それは、やられキャラじゃないですけど、ガタいが良くてすぐに鼻を折られるっていうヤツ、アレと舎弟が居てっていう。
アレは完全にギャグキャラじゃないですか。それで、途中で失明するみたいな。
アレなんかは80年代的のツッパリ的な、「ろくでなしブルース」とかその辺の匂いがするんですよね(笑)。






■ ニクロ

だから、豊田監督というのは新風を巻き起こしてるように見せて、本当に同じ事を繰り返してるようなタイプなのかな、って気はしますね。






■ ハイジン

まあ、調理の仕方ですけどね。






■ ニクロ

うん、素材は同じ(笑)。






■ ハイジン

ミッシェルの音楽が乗る事で、それでノせてくれるっていう感じで。






■ ニクロ

 また、感覚がいいんですよね。曲と曲との間が丁度いいっていうか。こっちも待ってるわけじゃないんだけど。
本当にゾゾゾゾって感じでかかっていくあの感じというのは。なかなか他の映画では観られない盛り上がり方というか。
基本的に無音ですからね、BGMとかに関しては。曲以外は。






■ ハイジン

本当に真の映画畑でやって来ていて、映画というモノをガチで作ってるそんな作品だと思うんですけどね。
あのスローのシーンとか。






■ ニクロ

スローはかなりベタというか(笑)。






■ ハイジン

あざとく見えちゃうけども、あざとさも含めて観ていてカッコ良いな、と思わせるような。






■ ニクロ

まあ、カッコいいんですよね。全体的に映画は。






■ ハイジン

冴えてるな、というそうゆうね。









屋上ゲーム









■ ニクロ

 屋上で手を叩く、っていうゲームはある意味で自分の限界を試すという、非日常みたいな所にあるじゃないですか。
ちょっと、浮遊出来るような所で。やっぱりそれを九条も学校が一番楽しくて、天国だって言ってるくらいだから、本当に死ぬ事も怖くなくてゲームにも参加出来る。
冒頭のシーンは屋上の扉が開く前のカットなんですね。一番最初のファーストシーンが。
要は閉塞感というか室内、学校の中から始まってそれが開いて屋上の中に出て行くっていう所から始まるじゃないですか。






■ ハイジン

本当に、言葉にするとあざといんですよね(笑)。






■ 電脳BOY

説明するとね(笑)。






■ ハイジン

開きますって事で(笑)。






■ ニクロ

 まあまあ、開放して写真をみんなで撮るじゃないですか。あそこまでは、わりかし青春なんですね。
青春というか、いわゆる青春っぽい所にあるというか、自分の限界を試そうとしているのが他のヤンキー映画であるとするならば、あの辺は本当に青春なんですけど、その後ミッシェルガンエレファントの曲が鳴って、「青い春」というタイトルが出るまでに彼らは学校に帰って行くんですね。
で、カメラがゆっくり学校の方を向くんですね。屋上の上から下に。やっぱり彼らはそこにはずっと居られない、って事じゃないかと思ったんですよ。あのカットは。
 つまり限界を試し続けるのが「クローズZERO」とか、あーゆう、いわゆる外に外に向けていくモノだとしたら「青い春」は中に帰っていかなければならないという事が、自分の中に自覚としてあって。
で、そうゆう事もある意味で閉塞感で、で、たまにはじき出されるのが屋上のゲームなんだけど、青木はもうそのままでは踏ん切りが付かなくなっていて一段飛びじゃなくて、十段飛びくらいしたくなって最後の屋上のゲームで彼は一日中外に居るんですね。
で、学校の中には戻らずに飛び降りちゃう、っていう。
 だから、ある意味では最後のあのシーンは青春じゃないかと思うんですよ。青木にとっての。
青春出来なかった者の、最後の青春みたいな。






■ ハイジン

 屋上ゲーム自体が、すごい内に内にっていう象徴なんですよね。
殴ってとるんじゃなくって、度胸試しでそれで番を決めるっていう、これも原作の設定のまんまだけど、この映画を象徴してるゲームなんですよね。
幸せなら手を叩こうですからね。






■ ニクロ

まあ、彼らは幸せではないですからね(笑)。そもそもに。
だから、アレは本当に去勢というか。強がりであって。






■ ハイジン

全てを学校の中で終わらせるというのは特殊ですよね。






■ ニクロ

そうなんですよね、一番出て行くとしても学校の校門の前で(笑)。
パトカーがだったり、女の子が居たり。






■ 電脳BOY

一切、外に出ないですからね。






■ ニクロ

この作品、広がりがあるかって言ったらハッキリ言って広がりもないんですよ。
駄菓子屋に行くシーンもありますけど。






■ ハイジン

駄菓子屋も校内ですからね。






■ ニクロ

だから、本当に内側を撮る事で外を見せるのではなくって、徹底的に内側を見せるという。






■ ハイジン

本当に、アレを一歩外に出た瞬間にスタジオを出るようなそうゆう感じなんですよね。






■ ニクロ

本当によくあんな学校をバミれたと思いますよ(笑)。






■ 電脳BOY

廃校じゃないですか? 知らないけど(笑)。






■ ハイジン

 まあ、それらは全て屋上ゲームに集約出きるってのはすごいですよね。
松本大洋の原作映画としては、一番面白いって事になるんですかね?






■ ニクロ

あとは「ピンポン」と「鉄コン筋クリート」?






■ 電脳BOY

実写だったら「ピンポン」は忠実だと思うんですけどね。ストーリー的には。
いい所は全部拾ってるという感じなんで。上手くまとまってるとは思いますよ。






■ ニクロ

「ピンポン」は原作にないシーンもちゃんと楽しませてくれる映画なんでね。
まあ、フィクションというか一種のファンタジーですからね「ピンポン」は。






■ 電脳BOY

そもそも、原作も高校生じゃないだろ、みたいなね(笑)。身体的には。SFみたいな。
超能力みたいな感じだからね。映画に関してはオリジナル部分が面白かったという、俺の中では。






■ ハイジン

あー、やっぱりそれに尽きますか?






■ 電脳BOY

尽きますね。映画を観る前に読んでるんで。ホントに逆だったら、ちょっとは違うと思うんですけど。

学校の雰囲気とかはどうですか? スプレーしまくってるとか、合ってないんですよね人物に。
そんなに荒れてるのか、っていう(笑)。






■ ハイジン

あの美術は俺は好きですけどね。






■ ニクロ

アレは一つのアートじゃないですか。作品のリアリティーとか、そうゆう事抜きにしての、さっきハイジンが話してた(学校という)セットの扱われ方で。
あーゆう、モンなんだという。






■ ハイジン

 だから、世界というのが学校しか無くって、そのセットの中であいつらが生きている、っていう世界なんですね。
だから、絶対に学校からは一歩も出ないけれど、他からも入って来ないという絶対的なルールがあるんですね。






■ ニクロ

でも、警察が連れて行きましたよ?






■ ハイジン

 そこが象徴的なシーンなんですけど、学校という領域から警察が引っ張って、追い出していくという。
だから抵抗するんですね。途中、ユキオも居なくなって、木村も居なくなって、って話があるけれど、ユキオは領域から連れて行かれて、木村は自ら進んで領域から出て行くという。
でも、その学校の中に居る限りは10段飛びは出来ないという。
じゃあ、どうするのかと言ったら、内へ内への中での究極の選択は屋上ゲームで13回叩くという。






■ ニクロ

 そうなんですね、ユキオと木村と九条が花を植えるじゃないですか。
本当に、花を植えて行った順に消えていくんですね(笑)。タバコをポンッと刺すんですけど、アレは昔ながらの刑事が死んだ時の線香なんですよ。
その辺が上手くなぞられていて、次、九条と行ったら青木で、どうなるんだという所で最後影見て終わるという。
 だから、その辺もあざといんですよね(笑)。もう、やれる事はやってやるみたいな(笑)。






■ ハイジン

あの影は松本大洋でしたっけ?






■ ニクロ

原作にはありますね。






■ 電脳BOY

松本大洋はあーゆう絵はよく描きますよね。






■ ニクロ

 本当に、マクガフィン的な(笑)。アレについて追求するのは、無意味っちゃ無意味というか。
屋上で散髪するシーンとか爆笑もんですからね。一番笑ったのが、「俺達卒業出来るのかな?」「無理じゃね、今授業中だぜ」って(笑)。






■ ハイジン

アレはメタ的な会話ですよね(笑)。






■ ニクロ

アレは本当に笑わさせて貰いました(笑)。






■ ハイジン

すごい不思議な台詞ですよね。俺たちが、あの出演者と一緒に映画を観てるような(笑)。






■ ニクロ

すごいですよ。あそこだけは一生忘れませんよ。









青い春が持つ空気









■ ハイジン

小泉今日子のキャスティングなんかは、監督も含めた映画の目線としてのアイドル的なキャスティングだったりするんですよね。






■ ニクロ

 ちょっと、変な違和感を意図的に狙っているような感じはあって。
また、音もいいんですよね。効果音とか。よく聞いたら明らかに違うんだけど、合っている音もあって。
ユキオが包丁で刺すシーンで、よくわからないけどみしみし鳴ってるんですよ。
サッと出したら、シャッっていいのに、すっごいみしみし鳴ってるんですね。それが、おかしいんだけどすごい合ってたりして。
その音が綺麗に録られたというよりは、この前のキャシャーンじゃないけど生生しいような音で、この映画は音とBGMがすごくマッチしているんですね。
 だから、音楽とか曲専攻で画作りをしているのかな、っていう気はするんですよね。最初のスローモーションのシーンにしても。
やっぱり、あの曲あの「赤毛のケリー」が流れてるあのリズムじゃないとスローは使えないって監督は解ってるんだという。
何処でもどの曲でもいいんだって事じゃなくて、歌を聴いてから描いてるような感じがすごく伝わって来るんですね。






■ ハイジン

そこは乗る要素としては最重要な点ですからね。






■ 電脳BOY

エンディングとかも綺麗ですからね。音楽の入れ方も。気持ちいいくらいの。






■ ニクロ

 リズメで撮られた映画ではないですからね、本当に。ふわっと繋がってるような。
ユキオがあいつを刺すのも、その前に面接のシーンがあって世界平和とか願ってますとか、ウルトラ警備隊とか言って、だから刺すっていうのも、こっちは納得はないんだけど、あの顔とあのカットで見せられてしまうと、何か納得するしかないような。






■ ハイジン

 ユキオが刺した後で、警察に引っ張られていく所で、彼女がそこで待っていて、実はその時学校では授業をやっていてって、時系列がすごいめちゃくちゃなんですよね。で、ずっと九条は屋上に居てってゆう(笑)。
何処がどうなのか、って所がぐちゃぐちゃなんだけども、でもそこは4コママンガ的な見方で要は短編を繋げたっていう事で。






■ ニクロ

 まあ、要は人物にあくまで寄って行かないですよね。群像劇なんだけど一人一人を根っこから描くって事がなくて。
例えば最初パシリだった忍成修吾とか、後半で青木をバカにするじゃないですか。
あの辺も普通の監督だったらあそこをもっと掘り下げたいって所なんだけど、サラッと出してボキッと腕折って、もう次に行くみたいな。
本当にあの辺の切り替えの気持ち良さはありますよね。90分という時間もあるんですけどね。






■ ハイジン

あそこは笑えましたよね、すんごいバイクが来る所。たまんないですよね(笑)。
あの不良との絡み方が古谷実的な(笑)。不良が結構、しっかりした口調だったり。






■ ニクロ

あそこは原作にないですからね。






■ 電脳BOY

ってか、アレはなんやったんや、っていう(笑)。何も触れられずに終わってたから。






■ ニクロ

 だから、全体的に悲壮感とユーモアの織り交ぜ方のバランスがすごくいいんですよね。
本当に息の詰まるようなシーンにもユーモアがあって、それも腹から笑えるのじゃなくて、クスッと来るシーンが結構あって。






■ 電脳BOY

松本大洋の雰囲気は捉えてるんですよ、やっぱり。誰でも出せる空気じゃないからね、アレは。






■ ハイジン

松本大洋繋がりでは、映画の「鉄コン筋クリート」はどうですか?






■ 電脳BOY

映画は本当に、いい所はちゃんと押さえてるという。外してはいない。






■ ニクロ

 外してはいないんですけど、ベタではありますよね。あざといってほどでもないんですけど。
アニメでアレをやったって事自体が、偉業じゃないけど凄いって事はあるんだけど、ただ、アニメに置ける限界も見えちゃう作品なんで、やっぱり松本大洋の絵の間の感覚とか、静けさっていうのはアニメになると、いい所もあるんだけど、100%は出ないんだな、という。
超えられない、という所を100%認識させられたのも「鉄コン筋クリート」の気もするんですね。
やっぱり、まんま同じ台詞を入れて画面の中で幾ら暴れさせても、そうゆう事じゃないんだな、という所でね。






■ 電脳BOY

まあ、雰囲気マンガですからね、松本大洋って。雰囲気が大事なんですよ。






■ ニクロ

だけど、本当に何描いてもいいってわけじゃなくて。






■ 電脳BOY

あるんだけどね、ちゃんと。






■ ニクロ

そこを口で説明すると、すごいやぼったいというか。






■ ハイジン

じゃあ、映画には向いていないタイプというか。






■ ニクロ

 まあ、ストーリーだけ借りて割りと脚色するんだったら、面白いモノになると思うんですけど、「ピンポン」が正にそうだったわけで。
で、「鉄コン筋クリート」はまんまやり過ぎたという所もあって。アレは95%くらい同じですから(笑)。






■ ハイジン

2007年くらいの映画ですよね? 14〜15年前のマンガを(笑)。






■ ニクロ

アレは本当に監督のマイケル・アリアスが入れ込んでたってだけであって。
日本人であれば、今やろうって気はなかった気がするんで。






■ 電脳BOY

変にイジられるよりはマシなんですけどね、アレはアレで(笑)。









不良ヲタク映画









■ ハイジン

さっきの話を聞く限りでは、「青い春」はオリジナル要素を含んでるから、かなり松本色を払拭したというのはありますよね。






■ 電脳BOY

まあ、そうですね。






■ ニクロ

 オリジナル部分という言い方もあるんですが、繋ぎとして上手いというか。
繋ぎとしてのエピソードが間接となって、そこがオリジナルとなり、上手かったというか。
実際に原作には全員が入ってる写真なんてないですからね。
あそこを一つ写真で繋いでから、バラバラにしたってのは面白かったんですけどね。






■ 電脳BOY

みんな青春で破れてるんですよね、野球に負けたとか。






■ ニクロ

あの辺も学校に野球部があるのか、っていう(笑)。






■ 電脳BOY

一応、走ってるヤツは居たからね(笑)。まあ、違和感は結構あるんですよね、なんか。






■ ハイジン

まあ、あいつらも(舞台)セットですからね。






■ ニクロ

そうゆう事なんですよ。






■ ハイジン

セット以外の何者でもないというか。他の生徒も居るかどうかわからないですからね。






■ ニクロ

 でも、役者にいちいちハズレは無かったですね。誰をとっても。野球部のキャプテンも夢破れてっていう。
で、マージャンしてるじゃないですか。あの辺のボヤキが最後にいいんですよね(笑)。
だるい喋り方というか。全体的にだるい感じなんですけどね、キャラクターはみんな。
 これも、またあざとい話になるんですがホームランバーで野球部のアウトという事と絡めて、忍成修吾がダメだった、って事も絡めてエヴァンゲリオンでも似たような事をやってましたけど。






■ 電脳BOY

投げて車が通って、後から出てくる(笑)。






■ ニクロ

もう、なんていうか伏線にもなってない(笑)。かなり割り切って。
もうこれでいいんだ、という事でやってるってのがちょっと面白いんですけどね。






■ ハイジン

まあ、うん、4コママンガですからね。






■ ニクロ

 そこ行っちゃうとそうゆう事なんですよ(笑)。ただ、見終わるまではあっというまですよね。
元々短いんですけど、20分か30分くらいで終わったような感覚があって。
大人をほとんど出さず、家族も出さず、学校から一歩も出ずに映画を撮るっていう、かつそれで冒険をしてるって感じが全然、ないんですよね。
本当に、元々そうゆう映画なんだ、っていう所で。いやらしさがないじゃないですか。
この中だけで撮ったんだぜ、みたいな。それよりも、学校の中だけで撮るしかなかったんだよ、みたいな空気感というか。






■ ハイジン

 だから、学校の中だけで撮るという縛りではなくって、要するに学校の中だけでしか撮れないんだ、という、そうゆう一つの空気だと思うんですね。
で、その空気というものがそのまま屋上ゲームに直結していて、ホントに屋上ゲームというあの、番長決めの制度だけで全ての説明が付くくらいの作品だと思うんですけどね。






■ ニクロ

だから、一歩間違えたら不良映画ヲタク映画になっちゃたと思うんですけどね。






■ ハイジン

それは近い所がありますね。






■ ニクロ

外から持ち込まないですからね、モノを。






■ ハイジン

 不良達は出てくるんですけど、一般人が出て来ないんですよ。その辺の石なんですよ、生徒が。
だから、固定の不良たちが学校というセットの中で不良ごっこをしているような、常に内に内に行ってる作品なんで。
それをミッシェルの音楽が乗せてくれる。ちょっと劇に近いような。






■ ニクロ

 彼らは一応、仲間なんだけどサークルとか、クラブではなくって一回音楽室みたいな所に青木が入って来て赤シャツのあいつと、ユキオがギターを弾いてて、っていうシーンがあるじゃないですか。
あそこで一回、ちょっとサークルっぽい感じになるんですね。またみんなが集まって。屋上以外の所で。
で、なんか始まりそうなんですよ、物語が。物語が始まりそうな所で青木が腹が痛いって言って出て行くんですね。
それでもう場面が変わっちゃうんですね。だから、あーゆう風に寄ろうとすると、映画が散らしちゃうというか。
物語の高まりをそのままノせてくれない、っていうのをこの映画はずっと繰り返すんですよ。






■ ハイジン

 だから、場面が変わって、そこからまた始まると思ったら、また場面が変わるんですよね。
要するに青木のトイレのくだりがあった後に、今度はオバちゃん役の小泉今日子と談笑していて、そこで何かあると思ったら、そこにまた青木がやって来てっていう。






■ ニクロ

だから、基本的にフレームの中に大体は3人以上居ないんですよね。この映画は。






■ ハイジン

で、それは極論を言えばやっぱり4コママンガという事でまとめられちゃうんですよ。
セットの中の4コママンガっていう言葉に。






■ ニクロ

 でも、それは監督が一番そうしたかったんじゃないんですか、間違いなく。
だから、本当はこじんまりとした、とんでもない駄作になる可能性もあったわけじゃないですか。
このリズムを保てなければ。本当にプロデューサーからも「お前、何作ってるんだ」って怒られそうな作品になりかねなかった、というか。
よくこのシナリオが通ったと思いますよ。文章だけを見たら(笑)。






■ 電脳BOY

文章だけ観たら面白くなさそうだもんな(笑)。






■ ニクロ

よくGOと言わせたなと。スポンサーなりなんなりを(笑)。何も始まらないじゃねーかこの映画って(笑)。






■ ハイジン

 青木が死に至るまでの過程が、すごく雑でよくわかんないんですよね。
イマイチ劇中に考えさせる余裕が無いというか。何故、青木はココまで悩んでいたんだ、っていう。
ポンッ、ポンッ、ポンッと行くから気がついたらで。






■ ニクロ

 そこは映画全体で貫いてるから気持ちいいのであって、映画全体で色んな事を繋げてやってて、最後青木の問題をポンッ、ポンッとやったらたぶん観客は怒るんですよ。
今までちゃんとやってたのに、青木の事をポンッポンッとわかんないままそのまま行くんだ、ってなるんですけど、この映画は全部がそれで作られてるからそのリズムに乗ると青木があーなるしかないんだな、っていう(笑)。
もうノせられちゃってるんですよね、監督に。観てる方は。









セットの中の不良ごっこ









■ 電脳BOY

九条が教室に入って来た時に、机からどいていく彼はいいですね。単純に(笑)。
何も気にせずに勉強にスッと入るスタイルが、めちゃくちゃ僕は笑えるんですね。あの人に。






■ ニクロ

 それの二回目の青木がちょっと離れた九条に「九条ごめんなー」って、あそこはちょっとヲタッキーなんですね。
やってる事は。本当に中学生くらいの修学旅行のノリじゃないですか、あの感じは。
本当に不良たちが謝るって事じゃなくって。だから、決して彼らは不良じゃないんですね。
不良テイストでは描かれているんですけど。根本には幼い学生みたいな。






■ ハイジン

だから、屋上ゲームの発想自体がヲタクじゃないですか。内に篭ってるんですよね。






■ 電脳BOY

中学校の時に番を張ってたって言うからね。めちゃくちゃやん。もう(笑)。






■ ニクロ

 俺らが観ても面白いけど、思春期の学生が観てもこの映画はかなり面白いって気がするんですよね。
切り口だけ見せてくれるじゃないですか。変な話。理屈抜きにして。小難しい事抜きにして。
それで、ノせてくれるっていうのが。割かし上から下まで見れる作品じゃないかなっていう。






■ 電脳BOY

まあ、冒頭言ったように女の子はわかんないんじゃないですかね。こうゆう映画は。
解る人は解るかもしれないけど。






■ ハイジン

単純に映像と、音楽で乗れるっていうのはあるんですけどね。






■ ニクロ

 でも、逆に今考えたら、女の子もいいというか、暴力的な所が描かれないっていうのもそうなんですけど、変な強調性みたいな所で、若い男が学校の中に居る、っていうのはアイドル的な見方も出来ると思うんですけどね。
さっきの不良ヲタク的な見方としては。腐女子とまでは言いませんけど。






■ 電脳BOY

そうゆうのが好きであれば。






■ ニクロ

 誰かをボコボコにして、どうのこうのって映画ではないですからね。
全体的にまあ、可愛い映画ですからね。役者一人一人を見ても怖くないじゃないですか。
どっちかというか、友達に居たらいいな、ぐらいの感じじゃないですか。






■ 電脳BOY

友達になれそうですもんね。気が合いそう(笑)。






■ ニクロ

 あんだけ悪い学校なのに、そこを〆てるようなヤツが全然、そうゆう事ではなくて、割りとコミカルなんですね。
で、表情見ても全体的に落ち着いてるというか。柔らかい感じがあって。
俺から見たら、可愛いっちゃ可愛いんですよ。あの感じというのは。






■ 電脳BOY

体育会系ではないですからね。






■ ニクロ

全員、文化系ですからね。青い春の登場人物の線の細さを見てたら。
だって、あいつらが喧嘩強いなんて信じられないですからね。観てて(笑)。






■ ハイジン

だから、ボコ殴りというかバットで殴ってる所もあるんだけど、イマイチ迫力がないというか。
そこでの気迫がないんですよね。






■ ニクロ

青木の顔とバットだけを写して「オラー」「殺すぞ」を繰り返すだけの何でもないシーンなんですよね。






■ ハイジン

結局、アレが意図してるトコであって、そこでこちらが観てて怯えるようなのではダメなんですね。
不良ごっことしての映画だから。






■ 電脳BOY

不良ごっこ(笑)。






■ ハイジン

そうなんですよ。不良ごっこなんですよ。繰り返しなんですけど、セットの中で行われる不良ごっこなんですよ。






■ ニクロ

だから、やっぱりヲタク的な空間なんですね。






■ ハイジン

不良のヲタクなんですよ。たぶん松本大洋の原作では、そこはもうちょっと。






■ 電脳BOY

普通の不良やからね。シンナーばんばん吸ってるような学校だから(笑)。






■ ハイジン

それが、今の時代に置き換えられると自閉的なヲタクになっちゃうんですね。
結局、そこに着地すると思うんですね。結論としては。






■ 電脳BOY

そうゆう事ですかね。






■ ハイジン

はい。それでは、今回はこれくらいで。



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